約20年にわたりコンサルティング業界で活躍し、最近は女性のエンパワメントプロジェクトにも取り組んでいる大塚泰子さんに、キャリアで大事にしてきたことなどをうかがいました。
人を助ける仕事がしたいと考え
困っている企業を助けるコンサルティングの世界へ
実は、小学生の頃から、困っている人を助ける仕事をしたいと思っていたんです。きっかけは、社会の授業で足尾銅山鉱毒事件に尽力した田中正造という人物を知り、誰かを助けるために自分を犠牲にできる姿がかっこいいと思ったこと。もう一つ、私の母は大学教授、父は外科医と、両親ともにプロフェッショナル職なので、こどもの頃から自分もそういう職業に就かないと、という思いがありました。
そうすると、人を助ける弁護士かなと考え、大学の法学部に進んで司法試験の勉強をしていたのですが、私はこれではないなとも思っていて……。そんなとき、外資系のコンサルティングファームが自宅に資料を送ってきて、生まれて初めてこの世にコンサルティングという仕事があることを知ったのです。調べてみたら、利益が下がった、業績が悪化したなどの困っている企業を助ける仕事だとわかり、これいいんじゃない、と思ったのです。
私が携わっているのは、いわゆる戦略コンサルティングという領域。大企業のお客様をメインに、たとえば中期経営計画を作成したり、新規事業を一緒に考えたり、M&Aによる経営統合を支援したり。ここ5、6年は、サステナビリティやESGの視点も重要になってきているので、サステナビリティアドバイザリー分野も統括しています。

自分と向き合う貴重な時間となったエグゼクティブ・コーチング。自分がなぜそういう見方をしてしまうのかなど、気づきの連続でした。
自分と向き合ったことで
仕事のやり方が変わり、周囲との関係も良好に
以前、勤めていた会社では、次期役員となる人にエグゼクティブ・コーチングを提供していて、ある年、私も対象になりました。最初に360度評価の結果を見せられたのですが、それがすごくひどくて、傲慢、独裁、完璧主義という3つの要素がずば抜けていたんです。しかも、皆さんのコメントが、「彼女は優秀だけど一緒に働きたくない」「大塚さんが会議室に入ってくると恐怖で気温が2度下がる」等々。そのとき初めて、私ってこんなにみんなに嫌われているんだ、一緒に仕事をしたくないと思われているんだと気づきました。これは変わらないといけない、と。
そこから、通常1年のコーチングを2年間に延長してもらい、月に1回、1時間、自分と向き合う時間をつくりました。コーチは私の中にある答えを掘り出すために、いろいろな質問をしてくださるんです。「なんでそう思ったのかしら」「その裏にあるあなたの物語は何なのかしら」と、まるでカウンセリングみたいな感じ。途中で泣いちゃうこともあって大変な時間だったのですが、2年間終えたら、私の評価が「やさしい」とか「ポイントだけ押さえて、あとは任せてくれるから働きやすい」などガラッと変わったのです。そうしたら、コーチに「メタモルフォーゼしたわね」って言われました。メタモルフォーゼとは、コーチの言葉を借りると、サナギから蝶になるときに、サナギの中で幼虫の体がドロドロになる、もう完全に生まれ変わるということ。それくらいあなたは変わった、と言ってもらえたのです。これは自分の中でのターニングポイントだったなと思います。
社外の女性たちと連携し
意思決定層の女性割合を高める取り組みも
女性が働きやすい社会に変革することを目指して、Women Empowerment project「Toget-HER」の活動にも力を入れています。日本には女性活躍支援系の団体や企業は数多くありますが、組織が小さくて社会や政治になかなか声が届かないと感じていたので、ひとつのプラットフォームでつながれるようにと立ち上げたのです。今は、2030年には女性の意思決定層を30%にするため、団体や企業のリーダーが集まるイベントを計画しています。
ほかの視点でも、Toget-HERでもっとできたらいいなと思っていることがあります。女性の団体はネットワーキングに重きを置く共感型が多いのですが、私たちは実効性のあることをやっていきたい。「ロジックだけでは人は動かない、共感だけでは物事が前に進まない」。もちろん共感も大切なので、共感だけでは前に進まない部分をロジックで動かしていきたい、と思っています。

合同会社デロイト トーマツにてパートナーを務める
戦略・サステナビリティ領域の専⾨家
京都⼤学法学部を卒業後、総合系グローバルコンサルティングファーム、
外資系 IT コンサル企業を経て現職に⾄る。
約20年にわたって中期経営計画策定、新規事業創出支援や、
デューデリジェンス、経営統合⽀援等に携わり、
前職において⽶国ニューヨーク州の本社勤務も経験(2022-2023年)。
また、⼥性のエンパワメントやジェンダー多様性の推進にも注⼒しており、
2024年には「Women Empowerment『Toget-HER』プロジェクト」を⽴ち上げ、
企業横断的な⼥性リーダー⽀援の活動を展開している。