Patras Interview

vol.4

夢を実現するには
とことんトライすること。
失敗も経験の糧にして
再び、挑戦することです
川和まり

フィンテック起業家・元資産運用会社 CFO

自身の生きる世界を求め渡米し、金融のプロとして実績を重ね、夫と起業して成功の道を歩んだ川和まりさんの“挑戦”についておうかがいします。

 

アメリカで働くのなら、成功しよう
その決意が人生のターニングポイント

大学卒業後、日本で会計士補として働きだしました。時はバブル時代です。
当時の監査対象企業の財務部長から質問された内容が、あなた何歳? 結婚はしている? 子供はいる? 子供がいるのにどうして家にいないんだ。あまりの閉鎖的な質問に、私が生きる世界はここではない、私には違う未来がある。私の人生を築こう。そう思った時に、アメリカのビジネススクールへ通う決意をしました。

大学院を卒業後、ニューヨークとカリフォルニアの投資銀行で15年ほど勤めました。専門は金融です。アメリカでも金融業界は男性中心の世界。その中で体も声も小さい日本人が出世できるのか。苦労することも多々ありました。
しかし、アメリカでは、働く母親に足かせを課すような行為は法律で禁じられていて、ベビーシッターや家事を手伝ってくれる人を雇って、サポートをしていただきながら働き続けることができる環境が整っていました。自分でできることが大きくなったように感じて、アメリカで働き続けたからこそ、日本では到達し得ない域にまで行くことができたのだと思うのです。


今、新しい趣味として夢中になっている機織り。作品を作っていく喜びを実感中。

夫と会社をスタートアップ。
成功への階段は自分の足で登る

2008年、アメリカでは金融危機が始まり、私が扱っていた商品が、まさに金融危機を招いた張本人ともいうべき証券化商品でした。マーケットはあっという間に総崩れ。今まで金融の先端を行く商品を組成して経済に貢献してきたつもりでしたが、それが大きな間違えだったのではないかと考えるようになり、それを機に、世の中の役に立つような金融とは何かを改めて試行錯誤するようになりました。まさに信じて続けてきたキャリアに対する最大の危機であり、試練の時だったと思います。

そんな時、夫の経営する金融機関で金融フィンテックを一緒に起業することになり、2012年にエトモミーという部門をスタートアップすることになりました。私どもの会社は、すべて自己資本でスタートしたこともあり、信用こそが成功の鍵です。そういう意味では、夫は最高のパートナーという強みがありました。ただし、24時間仕事の話になってしまい、夫婦としての平等関係の公式が崩れることもありましたが、私たちは素晴らしいチャレンジを迎えました。
これまで培ってきた金融専門の知識やノウハウと、金融企業に勤めていたことから企業側の考えを理解している経験。それらすべての私の強みを生かし、業界知識、人脈、交渉スキルなどあらゆる様相を仕事に使える醍醐味を感じました。そして2019年に晴れて、弊社をアメリカ大手資産運用会社に売却することができ、一つの企業を産み育て、売却に持っていくライフサイクルを完結する達成感を味わったのです。

日本の上場企業と官民ファンドの
社外取締役を引き受け、新しいステージへ

現在は、ご縁に導かれ、日本の上場企業と官民ファンドで社外取締役を務めさせていただいています。私が今こうしてここにいられるのは、多くの方々のサポート、助言、何気ない一言があったからだと、改めて思います。もし、あの時、1歩間違えていたら、全く違う人生になっていたとありありとわかるのです。だからこそ、今の生活に奢ることなく、毎日を新鮮に迎えられるよう、運に感謝をして日々過ごしています。
夢というのは、ただ夢見ているだけでは実りません。好奇心の種を拾っては植えて、その種がいつか木になり実を結びます。だからこそ、失敗を恐れずにチヤレンジする。失敗は学びで、知恵をつけてまたやり直していけばいい。その努力と学びを怠らなければいいと思うのです。
そして、私はもう一度、何かに挑戦してみたいと思っています。営利目的の企業を立ち上げるということではなく、人の夢をサポートしてあげることができればと思うのです。それは、私がこの世界にいることの意義を形にすることかもしれません。今は旅をしたり、さまざまに見聞を深めながら、次なる挑戦への実験をしているところです。 


川和まり
フィンテック起業家・元資産運用会社CFO
大学在学中より、報道翻訳の仕事を手がけ、
卒業後は日本の企業の会計監査に従事。
その後渡米。長年、米国証券及び資産運用会社で金融のプロとして勤務し、
2012年に米国でフィンテック企業を起業。
2019年に大手資産運用会社に売却。
現在は米国のTinderWealth Technologies, Inc.
(ティンダーウェルス・テクノロジーズ・インク)、
日本の官民ファンドJICT株式会社 (海外通品・放送支援機構)、
日本の上場企業ミナトホールディングス株式会社、
3社の社外独立取締役を務める。
現在は米国カリフォルニア州サンフランシスコ郊外在住。