歌舞伎座、国立劇場、新橋演舞場、浅草公会堂、大阪松竹座と、東西で多くの歌舞伎の公演が行われる 1月。中でも注目したいのが、浅草公会堂で上演される「新春浅草歌舞伎」です。若手歌舞伎俳優たちが古典の大役に挑む公演に登場する注目のネクストスターと、出演演目の見どころをご紹介します。
文/清水井朋子
夫婦の情愛を描いた名作に挑む
中村橋之助さん
成駒屋三兄弟の長男で、昨年から新たになった新春浅草歌舞伎のメンバーの中でもリーダー的な頼もしい長男キャラの中村橋之助さん。お父様は中村芝翫さん、2025年はプライベートでも俳優の能條愛未さんとの婚約が発表され話題を呼びました。
そんな橋之助さんが第2部『傾城反魂香』で演じるのは言葉が不自由な絵師・又平。口達者な女房に支えられ、師匠に土佐の名字を名のることを願い出るも許されず、死を決意した時に起こる奇跡とは…。お正月からほっこりと幸せな気持ちになれる夫婦の情愛の物語です。

『傾城反魂香』浮世又平後に土佐又平光起=中村橋之助
筆の力で虎を消し去るファンタジー
市川男寅さん
新春浅草歌舞伎初登場の市川男寅さん。お祖父様は市川左團次さん、お父様は市川男女蔵さん。プライベートでは世界遺産検定1級保持者で国内外を旅しているそう。
第2部『傾城反魂香』で演じる土佐修理之助は、主人公の又平のライバル的存在。師匠の覚えめでたい若武者ですが、又平の境遇に同情する優しい一面も持ち合わせる姿にもご注目を。

『傾城反魂香』土佐修理之助=市川男寅
六世歌右衛門ゆかりの振付で
中村莟玉さん
華やかで愛らしい容姿に恵まれ、古典から新作まで活躍する中村莟玉さん。一般家庭より歌舞伎界に入り、2019年に中村梅玉さんの養子となりました。2025年は大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも出演。プライベートでは大のパンダ好きとしても知られています。
第1部で踊る『藤娘』は、歌舞伎舞踊の名作。今回は養祖父である六世中村歌右衛門さんが残した「潮来出島」という古風な振付による上演とのこと。お見逃しなく!

『藤娘』藤娘=中村莟玉
2026年も時代物義太夫狂言の大役に
市川染五郎さん
2025年の新春浅草歌舞伎で『絵本太功記』の武智光秀を演じて喝采を浴びた市川染五郎さん。お祖父様は松本白鸚さん、お父様は松本幸四郎さん。歌舞伎での活躍にとどまらず、プライムビデオで配信されているミステリードラマ『人間標本』の主演 、また2026年には舞台『ハムレット』への出演も予定されています。
第1部『梶原平三誉石切』で演じる梶原平三景時は、智勇と情を兼ね備えた武将。
六郎太夫と娘の梢が持参した刀の目利きを頼まれ、罪人を試し切りすることになった時に発揮する知略とは…。懐の大きな主人公をどう見せてくれるか楽しみです。

『梶原平三誉石切』梶原平三景時=市川染五郎
男女の踊り比べが楽しめる舞踊
尾上左近さん
『妹背山婦女庭訓 吉野川』の雛鳥、『菅原伝授手習鑑』の苅屋姫といった古典作品で可憐なお姫様役をつとめる一方で、『歌舞伎 刀剣乱舞』、『超歌舞伎』などの新作でもファンを増やしている尾上左近さん。お父様は尾上松緑さん。5月の歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」で三代目尾上辰之助を襲名することが発表されており、2026年は飛躍の年になるはずです。
第2部『男女道成寺』は『京鹿子娘道成寺』の趣向を取り入れた舞踊作品。
桜が満開の道成寺に白拍子の桜子と花子が舞を奉納するために訪れますが、実は桜子は男の狂言師。名曲を、女方と立役で分けて踊る面白さを堪能して。

『男女道成寺』白拍子桜子実は狂言師左近=尾上左近
姫から獅子への変化も見どころ
中村鶴松さん
自主公演「鶴明会」で『仮名手本忠臣蔵 五、六段目』の勘平と舞踊『雨乞狐』の六役早替りに挑み話題を呼んだ中村鶴松さん。
一般家庭に生まれ育ち、十八世中村勘三郎さんに見出され、部屋子として活躍してきましたが、2月の歌舞伎座『猿若祭二月大歌舞伎』で初代中村舞鶴を襲名し、幹部昇進することが決まりました。
第1部『相生獅子』は、前半では二人の姫が四季折々の様子や恋に迷う女心を獅子頭を手に踊り、後半は獅子の精となって毛振りが披露される、新年に相応しい華やかな舞踊です。

『相生獅子』姫=中村鶴松