Yuri Okabe

ビジネスコンシェルジュ

外資系金融機関で20年間勤務した後、独立。
独立系ベンチャーキャピタルと連携し、
起業支援や経営戦略の立案、新規上場やM&Aに携わる。
2015年、国内外のネットワークを活かし、
企業の海外進出支援やビジネスマッチングを行うYURI LINKSを設立。
起業から事業再編、事業継承、資金調達などの相談、
富裕層の資産活用アドバイスなども行う。

今からでも間に合う「私産1億円」の叶え方

『学ぶ努力』が、私産を築く。
岡部ゆり×川和まり(第二回)

NISAやiDeCoなどの制度整備が進み、投資は身近な存在になってきました。
それでも、「自分に合った選び方がわからない」「何から始めればいいのか不安」という声がまだ多いのも事実です。
今回は、フィンテック企業の創業・売却を経験し、金融の現場を知り尽くす川和まりさんに、「個人が自分の判断で投資を行うために必要なこと」について伺いました。



誰もが機関投資家になれる時代

「そもそもフィンテックって何?」
今回の対談は、そんな素朴な疑問から始まりました。フィンテックとは、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉。川和さんがCFOとして創業したEmotomyは、個人投資家が分散投資できるBtoBプラットフォームを金融機関に向けて提供していました。
「個人が直接アクセスするのではなく、銀行などがこの仕組みを使い、その先のお客様に届ける」。
つまり、個人レベルで機関投資家のように分散投資を行える仕組みを、より多くの人へ“橋渡し”するための設計でした。
日本でも、新NISAやiDeCoなど制度の整備が進んでいます。
けれどその中身、つまり「何を選ぶか」は、制度が決めてくれるわけではありません。
そこで話題は、「分散投資とは何か」「リスクとはどう向き合うべきか」へと移っていきました。

“選ぶ力”は、リスクと向き合う力

「まずは自分の“リスク許容度”を知ること。年齢や生活状況によって、取ってよいリスクは変わると思います」
川和さんはそう強調します。たとえば退職後の生活資金をハイリスク商品に投入するのは危険ですが、一方で若い世代には“取り返す時間”があります。
自分はどのライフステージにいるのかを理解してから、投資対象を考えることが大事なのです。
川和さんは、この考え方がアメリカの制度設計にも共通していると指摘します。
「401kやIRAなど、税を繰り延べる仕組みは日本の新NISAやiDeCoと同じです。
けれど、そこに何を入れるかは個人の判断です」
株式・債券・不動産・為替・先物・ベンチャーキャピタルなど金融商品には多くの選択肢があります。それぞれリスクとリターンが異なるため、「ひとつのマーケットが崩れてもほかのマーケットが伸びる」という形にした方が安全。そんな分散の組み方こそが、投資の基本だと指摘しました。
商品の内容を理解し、自分に合うかどうかを判断する――その一つひとつの過程が、自然と“考える力”を養っていく。
投資とは、そうした思考の反復でもあるのだと感じ取れました。



川和さんのお話を聞いていて、投資以前に「姿勢」の話なのだと感じました。流されず、分からないままにせず、自分で調べ、理解してから選ぶ。その積み重ねが、気づけば私産につながっていく。特別な方法ではなく、続けてきた姿勢の差なのかもしれません。

「金融は面白い」――社会の仕組みが見えてくる

「金融って、実はすごく面白いんです」
川和さんがそう話すとき、それは決して“お金を増やす楽しさ”だけを指しているのではありません。
「国債、社債、株、為替、金、不動産――それぞれに役割とリスクがあって、それを理解すると経済の流れが見えてくるんです。そこに自信が生まれるし、売りつけられる一方じゃないっていう、その満足感も出てくると思うんですよね」
この言葉には、投資を“選ばされるもの”ではなく、“自分で選ぶもの”へと変えていく視点が込められていました。同時に、知識を得ることで自信につながり、判断力を育てる手段にもなる――そんな気づきを与えてくれる言葉でもありました。

今回の対談を通じて、「投資」は決して限られた人のものではなく、誰にとっても“未来を選ぶ力”を育てる行動なのだと再認識しました。そして、その第一歩は、知らないことをそのままにしないこと。恐れずに学び、自分の価値観で選ぶ――それが“私産1億円”への最初の投資になるのかもしれません。
印象的だったのは、川和さんが投資を「経済的な行為」としてだけでなく、「自分で考える力を養う学び」として捉えていたこと。情報に流されず、自分の価値観に照らして選ぶという姿勢は、単にお金の使い方にとどまらず、人生の選択全体にも通じるのだと感じました。  


川和まり
フィンテック起業家・元資産運用会社CFO
上智大学卒後、報道翻訳を経て公認会計士資格を取得。
国内の監査法人、米国の外資系金融機関を経て、夫とともにフィンテック企業Emotomyを共同創業、
同社のCFOとして経営から資金調達・事業売却(2019年:ノーザン・トラスト)まで統括。
現在は、複数企業の社外取締役を務めながら、金融リテラシー啓蒙や女性のキャリア支援に注力。