波静かな海岸線と緑豊かな自然が広がり、多様な人々と文化が交差する、神奈川県逗子市。ここを舞台に、2026年10月3日(土)から10月25日(日)まで「逗子アートフェスティバル2026」が開催されます。総合プロデューサー・ディレクターを務めるのは、Patrasコンシェルジュでおなじみの墨屋宏明氏。期間中、参加型インスタレーションやワークショップ、音楽祭などのさまざまなプログラムを、街中や公園など随所で堪能することができます。
歴史的建造物の旧本多邸に特別展示されるR.バックミンスター・フラー氏の大型石版画「テトラスクロール」「逗子アートフェスティバル2026」からはじまる
未来に向けての新たな視点と対話
2013年に市民有志によって始まった逗子アートフェスティバルは、2026年に14回目の開催を迎えます。
テーマは、『はじまりの未来、はじまりの場。』。
「『はじまり』とは、いま何かが始まるという意味だけではありません。あらゆる『はじまり』が重なり合い、現在をかたちづくり、未来へとつながっていく。このテーマは、そうした時間の捉え方から生まれたものです」と墨屋宏明氏は語ります。
また、未来と過去は切り離されたものではなく、「いま・ここ」に存在する流れの中にある、としています。この考え方は、逗子在住の世界的な写真家・森山大道氏の「過去はいつも新しく、未来は常に懐かしい。」という言葉に呼応したものでもあります。
さらに、このテーマの背景には、建築家・思想家R.バックミンスター・フラー氏による「テトラスクロール」の思想もあるとのこと。生命や物理の基本構造となっている三角形の構造が着想源となり、多様な人々や文化、出来事が結びつきながら新たな未来を形づくっていく姿を重ねているのです。
「海と山に抱かれ、多様な人々や文化が日々の生活と交差してきた逗子には、表現や対話が生まれる豊かな土壌があります。この場所で、人それぞれの『はじまり』から、新たな視点や予感、そして未来へ続く対話が生まれることを願っています」(墨屋氏)
旧本多邸寝室における、逗子在住の仲本拡史氏による映像インスタレーション「アーマンヌイミ(ヤドカリの夢)」歴史的建造物をはじめ
商店街や図書館などの日常空間もアートのステージに
逗子には、森山大道氏や栗林隆氏、CINEMA CARAVANのように、国内外で活動するアーティストや表現が生まれてきた土壌があります。それは、特別な文化施設だけではなく、逗子文化プラザや逗子市立図書館のように、市民が日常的に行き交い、偶然の出会いが生まれる場所が街の中に根付いていることとも関係しているのかもしれません。「逗子アートフェスティバル2026(ZAF2026)」では、そうした日常の場所に加えて、歴史的建造物である旧本多邸や、沼間のフリースクールcas!caも会場となります。歴史的なものと現在の暮らしがつながり、その間から新しい表現が生まれていることも、今回の大きな特徴です。
本年2026年は、3年に一度の特別開催年。旧本多邸をメイン会場に、逗子の商店街や図書館、公園、空き家など、街全体を舞台として展覧会や音楽祭、市民参加型プロジェクトなどが展開されます。
1939年に建てられた旧本多邸は、2022年に国の登録有形文化財に指定された貴重な建築物。ここではメインとなる展覧会「はじまりの未来、はじまりの場。」が開催されます。今回のテーマ設定に影響を与えたR. バックミンスター・フラー氏の大型石版画絵本『テトラスクロール 少女ゴールディと3匹の熊たち』の特別展示では、宇宙や生命、地球の未来をめぐるフラー氏の思索を、子どもたちや学生が朗読や映像作品として読み解き、次の世代へつないでいくことを試みます。
逗子に残る神奈川県最大級の前方後円墳長柄桜山古墳群に基づいたリサーチのもと旧本多邸の建物そのものに響く音を体感できる、大気の入り江によるリスニング・インスタレーションも行われます。尾潟糧天氏、高屋永遠氏、仲本拡史氏、フランシス真悟氏、山田悠太朗氏の新作や、潘逸舟氏らによる「揺らぐ世界から、未来を見つめる4つの映像作品」も、それぞれが呼応しあっています。旧本多邸という建物そのものを、太古から未来へとつながる方舟のように感じながら、作品を観るのもいいのではないでしょうか。
逗子市立図書館ガラス壁には、森山大道氏の代表作「三沢の犬」をはじめとした動物と植物の作品が約30mにわたり並ぶJR逗子駅と京急逗子・葉山駅を中心とした逗子市街エリアでは、商店街、JR逗子駅前工事壁、逗子市立図書館、逗子文化プラザホールなど、日常に溶け込んでいる親しみのある場所が会場に。ここで数多くのアーティストによる多様なアートが展開されます。写真家・森山大道氏による街や動物、植物を映した作品群も屋外展示され、この街を歩く私たちに、見慣れた風景の奥に潜む時間と記憶を静かに問いかけることでしょう。
このほか、逗子ゆかりの文豪・徳富蘆花氏にちなんで開園した蘆花記念公園、JR東逗子駅を中心とした閑静な沼間エリアでも多彩な展示が用意されています。
R.バックミンスター・フラー氏の「テトラスクロール」について、子どもたちに話す墨屋氏。ワークショップで模型を使い学び、子どもたちがテトラスクロールを朗読した声が作品になるワークショップや音楽祭など
実際に参加して体験できるアートプログラムも
「逗子アートフェスティバル2026」では、期間を通して開催される展示以外にも、トークショーやワークショップ、映画上映など多数のイベントがあります。
初日の10月3日(土)にはオープニングアクトとして、逗子を拠点に活動する写真家・映像作家の志津野雷監督(CINEMA CARAVAN)によるドキュメンタリー映画『beyond documenta fifteen』が、辰田翔氏 / notremusica orchestraによる生演奏とともに上映されます。これは、“アートのオリンピック”とも称される国際芸術祭「documenta fifteen」の全体キュレーター・ルアンルパ氏へのインタビューを軸に、CINEMA CARAVAN と栗林隆氏の実践、「NO ART MAKE FRIENDS」の思想を描いた作品。映像とライブ演奏が響き合い、芸術祭が人と人、人と地域をつなぐ場となる可能性を体感できるプログラムです。作品「丸久YATAI TRIP」では、栗林隆氏の行きつけの焼き鳥屋「丸久」の特別席で実際に作品の中で焼き鳥をつまみ、人と人との境界を越えてつながる行為そのものが作品となります。
アートイベント「丸久YATAI TRIP」では、焼鳥屋「丸久」の特別席で実際に焼鳥をつまむこと、人と人との境界を越えてつながること、その行為自体が作品となるまた、フィナーレを飾るのは、10月24日(土)と25日(日)に池子の森自然公園で開催される「池子の森の音楽祭」。今年で9回目を迎えるこの音楽祭では、逗子アートフェスティバル特別企画として、「切腹ピストルズ 又の名を江戸一番隊」が音楽祭2日目に逗子海岸から池子の森自然公園まで街を練り歩きながら演奏し、芸術祭と街をつなぎます。
ここでご紹介した展示やイベントのほかにも、さまざまなアートプログラムがあります。心地よい秋の一日、逗子の街を巡りながらアートに触れてみてはいかがでしょうか。
初日のオープニングアクトのチケットには、展覧会共通チケットも付いているので、25日間にわたる逗子アートフェスティバルのはじまりから参加するのもおすすめです。
※各会場や展示、イベント等の詳細は公式サイトでご確認ください。
公式サイト:https://www.zushi-art.com/zaf2026
