歌舞伎は観に行く方でも、文楽を観ている方は少ないようです。
3人で一体の人形を操る世界でも稀な芸術の魅力を繙きます。
よく、文楽と人形浄瑠璃は違うもの?という質問を受けますが、文楽とは人形浄瑠璃のひとつの呼称とでも言いましょうか。まずは歴史をお浚いしてみましょう。
京で盛んだった人形浄瑠璃。江戸時代元禄の頃、竹本義太夫という語りが大阪の道頓堀に「竹本座」という人形浄瑠璃の芝居小屋を開いて、近松門左衛門の作品で大人気を博しました。その後、植村文楽軒が大阪高津新地に人形芝居の座を設け、明治になって三代目が大阪松島新地に「文楽座」という劇場を建てます。後にこの文楽座のみが残ったため、「文楽」が人形浄瑠璃を意味する呼称となっていきます。演目自体は歌舞伎に通じるものがありますが、文楽の特徴はなんと言っても太夫と三味線と人形が三位一体となって繰り広げる芝居というところにあります。
ひとりですべての登場人物を演じ、ト書きを独特な義太夫節で物語る太夫(語り)、人物の心情や情景描写を表現する太棹の三味線(音響)、一体の人形を、かしらと右手を遣う主遣いと左手を担当する左遣い、足を使う足遣いの三人の人形遣い(役者)、これらが渾然一体となって舞台を支配すると、人形がまるで生きているようにさまざまな表情を見せるというなんとも魅惑的な芸術なのです。
インドネシアの影絵劇やチェコのマリオネットなど世界中にさまざまな人形劇がありますが、文楽のスタイルは他に例がなく、ユネスコ無形文化遺産にいち早く認定されました。
主な公演は大阪と東京の国立劇場で行われてきましたが、東京の国立劇場の老朽化建て直しに伴い、東京公演の会場は定まらず、人気の陰りに拍車をかける国内状況に対し、イギリスの有名な人形劇団 Blind Summit が BUNRAKU を取り入れてブレイクするなど、海外での評価は高まる一方という少し皮肉な状況となっています。
つづく