2025年の歌舞伎界最大の話題といえば、
八代目尾上菊五郎さんと六代目尾上菊之助さんの襲名披露公演。
初心者も楽しめる見どころと裏技を、大の歌舞伎ファンという
ジュエリージャーナリストの清水井朋子さんに伺いました。

口上 撮影:岡本隆史
幼い頃から叔母さまに連れられ歌舞伎を観てきたというジュエリージャーナリストの清水井朋子さん。
「ここ 20 年ほどは、毎月の歌舞伎座の昼の部、夜の部に加えて新橋演舞場や浅草、国立劇場、さらに地方の劇場まで加えると年間 30~40 公演は通っているかもしれません」。 そんな清水井さんにとっても、今年の 5 月、6 月の歌舞伎座から始まった襲名披露興行は特別 な大イベントだといいます。 「尾上菊之助さんが八代目尾上菊五郎を襲名。これまでの菊五郎さんもそのまま七代目として同 じお名前を名乗り続け “ダブル菊五郎体制” になることと、長男で小学6年生の丑之助さんが六 代目として尾上菊之助を襲名することで話題です。お芝居にも舞踊にも真摯に向き合うお二人 の世紀の晴舞台、周囲の方を誘っては、毎週のように歌舞伎座に出かけています」。

菅原伝授手習鑑 車引/寺子屋 撮影:岡本隆史
襲名披露興行ふた月目となる6月の昼の部では『菅原伝授手習鑑』から「車引」と「寺子屋」が上演されます。「歌舞伎芝居には大きく分けて、江戸時代の人から見てもさらに昔の歴史的なお話を扱った“時代物”と、江戸の庶民のリアルな生活を題材にした“世話物”があります。『菅原伝授手習鑑』は時代物の傑作。敵味方となる主人に仕えた三つ子の物語で、「車引」では新・菊之助さんが梅王丸を荒々しく、「寺子屋」では新・菊五郎さんが菅原道真の若君の身替わりに我が子を犠牲にする松王丸の悲劇を演じます。今年は9月に歌舞伎座で『菅原伝授手習鑑』の通し上演もあるので、その予習としても観ておくことをおすすめします」。

連獅子 撮影:岡本隆史
6月の夜の部では新・菊五郎さんと新・菊之助さんの親子による『連獅子』も見逃せません。 「獅子が我が子を谷へ突き落として鍛えるという故事に因んだ舞踊を、実の父子で踊るので、きっと感情移入してしまうはず。当代屈指の踊り手である新・菊五郎さんはもちろん、新・菊之助さんの踊りも素晴らしく、“かわいい”とか“小さい”などという形容詞では済ませれない一人前の歌舞伎俳優さんとしての見事な踊りです」。

祝幕
襲名披露興行の上演前にかかる“祝幕”。6月公演では日本画家の大河原典子さんが手掛けたティファニーのサポートによる『菊富士曙』が披露されます。 「先月の田渕俊夫さん画・長谷萬提供の祝幕に続いて6月も芸の高みを目指す志を思わせる富士山がモチーフ。お二人のお名前にちなんだ菊の花と重ねた素敵な祝幕の前で、記念写真の撮影もお忘れなく」。

初めて歌舞伎を観る方には、台詞が難しいのでは?という声もありますが…。 「今とは異なる言葉遣いもありますが、人と人とのドラマはいつの時代も同じ。イヤホンガイドを借りれば舞台の進行に合わせてあらすじや見どころの解説を聞きながら楽しむこともできますよ」。 イヤホンガイドは現地決済価格1台800円のところ、事前にオンラインストア「耳寄屋」で予約すれば1台700円(税込+手数料2%)とお得に利用できます。6月公演では幕間(休憩時間)に襲名するお二人の特別インタビューの放送もあるそう。 詳しくはこちらから
https://earphoneguide.eg-gm.jp/n/ncf48cc5b1f78

花篭 襲名御膳/やぐら 襲名弁当
幕間の食事もまた、観劇の楽しみです。「江戸時代から“か・べ・す“と言って歌舞伎は菓子や弁当、寿司を食べながら観るものだったようです。3階のお食事処「花籠」の襲名御膳(4600円)や歌舞伎座タワー地階、木挽町広場のお弁当売り場「やぐら」の襲名弁当(2600円)など、今だけの特別なメニューもチェックして!」。

襲名記念グッズ アクリルスタンド

「八代目尾上菊五郎 六代目尾上菊之助 襲名展」より 連獅子の衣裳
6月30日(月)まで、銀座三越新館9階銀座テラス テラスルームにて、「八代目尾上菊五郎 六代目尾上菊之助 襲名展」も開催中。(入場無料) 「これまでの出演舞台や活躍を振り返るほか、襲名演目にまつわる歌舞伎の衣裳や小道具、台本なども展示されます。歌舞伎座での襲名披露興行と合わせて、ぜひ足を運んで」。 https://www.mistore.jp/shopping/event/ginza_e/isho_51
八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助襲名披露興行は、5、6月の歌舞伎座を皮切りに7月は大阪・大阪松竹座、10月は名古屋・御園座、12月は京都・南座、そして2026年6月の福岡・博多座へと続きます。 「歌舞伎は役者で観るエンターテインメントでもあります。襲名という大きな節目に立ち会うことで愛着がわき、この先の歌舞伎俳優としての人生をずっと応援していきたいという気持ちが生まれるかもしれません」。