四季のある日本でも、最近はとにかく暑い時期が長く続いています。
ファッションの世界も涼やかで軽い装いが人気。
そこで密かなブームが到来している天然素材が「アバカ」です。

マクラメ編みで菱立涌模様に編んだバッグ。持ち手は大分の竹作家作。
あえて天然素材を選ぶ理由
「アバカ」とは、糸芭蕉のこと。糸芭蕉の茎から繊維を取り出して糸にした伝統的な織物に沖縄の高級品「芭蕉布」があります。最も多く自生するフィリピンでは、船舶用のロープや魚を捕る網などに用いられてきました。それらは主に母から娘へと伝えられる手仕事、マクラメ編みで作られています。織物と編み物の違いはありますが、古くから使われている身近な素材。軽くて水に強く、耐久性があり、通気性、浸透性に優れていることが特徴です。バッグなどファッション小物、家具や装飾品、最近ではコーヒーフィルターにも使われている注目の天然素材なのです。

インテリアにも素敵な花継ぎ模様のカフェマット。
フィリピンの伝統工芸と日本のデザインの融合
マクラメ編みで作ったバッグや小物類はフィリピンのお土産店でよく見かけます。約 10 年前、日本の NPO 法人が、技術を指導して日本向けにデザインした商品の制作を開始。天然素材の魅力に洗練が加わるとともに、現地の職人のクオリティも上がりました。現在、NPO のこころざしを[M+abaca]というブランドが受け継いでいます。いつか大地に還るときのためにバッグ類には金具がなく、水洗いでき、かごバッグなのに畳める仕様。一部商品は日本の工芸作家や竹工房とのコラボレーションにより、上品な趣を添えます。

定番のかごバッグ。収納力も人気の理由。
和の心に通じる作品が人気
アバカにいち早く目をつけたのが、きもの愛好家たち。天然素材の知識があり手仕事とその価値を高く評価するユーザー。その声に応えて、八寸帯や半幅帯、数寄屋袋などの和の製品を作るようになったそうです。帯のように細く長い作品は熟練を要するため、一年間で数十本しかできないこともあり、現在バックオーダーでの制作となっているとのこと。経年変化で深まる色や艶といった、天然素材ならではの使って育てる感覚も日本人の和心をくすぐります。