Patras Interview

vol.1

好きなことを仕事にしたい。
だから、学び続け
常に新しい挑戦をするのです
浅生亜也

PerkUP 株式会社 代表取締役社長

まったく新しい旅の形を提案したい。日本の素晴らしさと世界の旅人とをつなぐ。
浅生亜也さんの未踏の挑戦についてうかがいました。

 

次世代へつなぐ新発想の旅の形を求めて。
仕事人生最後の挑戦が始まる

ホテル事業に携わってから 20 年以上になります。この先、残りの仕事人生の中で、私は何に貢献できるかと考えた時に、今までお世話になってきたホテル業界、観光業界、観光に携わる方々に対して貢献し、その事業を次の人たちに託したいと改めて思い、2020 年に新規事業 PerkUP 株式会をを設立し、2025 年に本格的に事業に取り組みます。
2017 年に創業したSAVVY Collective では、ホテルや旅館の再生やリブランディングを手がけてまいりました。日本の地方にうかがい、地方のよさとはなんだろうかと学ぶなか、日本人は季節とともに生活し、行事を通して季節を動かしながら 1 年を過ごしている素晴らしさを見せていただきました。食材、花、家のしつらえ、どれを取っても季節を刻みながら表現する意識の高さ。その季節に呼応するかのような礼儀作法や地方独自の慣習。それらすべてが繋がって日本の文化という見えない形になって、何世代も粛々と続いている。とても意味深い勉強をさていただいたと思います。
私は学生の頃から 20 年間海外で暮らしていました。ですから、日本の文化については一つ一つが勉強だったのですが、逆によく知らないからこそ、客観的に海外の視点でそれらを見ていくこともできたのです。このフレッシュアイはとても役立ち、新しい観点で日本の文化を理解していくことができました。それが、既存の旅館やホテルの再生、再出発を考えるにあたり、いろいろなアイディアソースやひらめきとなり、湧いてくるのです。地方の慣習にのっとって代々暮らしている方々や、歴史が長く続く老舗は、毎日の営みゆえに、日本のよさや魅力が日常化してボヤけていってしまっていることがあるのです、しかし、そこにたくさんの宝がある。魅力が眠っているのです。それを新しい生活スタイルや新しいマーケットに対してどういう形でつくっていくと活かせ、さらには愛されるようになっていくのか。そして、どのように次の時代に継承していけるのか。本当に毎日が学びの連続でした。
感染症の影響が解除されると国内旅行は活況を取り戻し、インバウンドにより、日本の有名な観光地はオーバーツーリズムになっています。しかし、海外の旅行者も日本の旅行者も、人でごった返すような観光地は望んでいない。ここではなく、日本の魅力が溢れた自然が豊かな地域、文化が脈々と続く村、そこでしか食べられない食材のあるエリアに行きたいと思っています。しかし、その情報はとても限られているのが現状です。地方の素晴らしさを肌で感じ、学ばせていただいた今だからこそ、私は今までとは違う旅の入り口を創ろうと、新たなる挑戦を決意したのです。


SAVVY Collectiveで手掛けた、ライムリゾート箱根

AI 時代で旅のあり方が変わっていく。
新しい旅の形をつくる挑戦へ

これまでの旅スタイルは、行き先を決めることからスタートしていました。ところが、AI の登場のおかげで、こんな経験がしてみたい、こんな旅のスタイルをしたい、こんな風景が見たい。願望ややぼんやりとしたイメージがあって、それを AI に探してもらうと、「ではこの国のこの村のこの体験はいかがですか」というように、旅の目的が訪れたい場所ではなく、願望や目的が旅のスタイルになる時代に変化していくと思うのです。私は物事を検索する時代から偶発的な発見や新たな視点を求めて探索する時代になると読んでいます。この地域には、この時期にこんな美味しいものがある。この季節にはこんな自然が楽しめる。こんな祭りがある。そのようなリアルの情報を、体験したい人々とリアルタイムにつなげて、旅に来てほしい。地域の事業者にも、そういう体験ならこの村でできると挙手していただいて、それを直接つなぐような、旅の創り方を逆の視点から捉えて仕組みをつくっていく新事業に挑戦します。
日本の村には、村の数だけ日常の独特な営みや文化が息づいています。地元の人はそれを観光資源だとは思っていないかもしれませんが、素晴らしい観光資源です。その地元の魅力を地元の人が、旅で訪れた人々に直接お届けする。日本の地方の隅々までを世界とつなげることができれば、日本の各地域にスポットライトがあたるかもしれないと思っているのです。

足りないと感じたら学び、そして挑戦する。
挑戦したら、次の挑戦をする。
私の人生のターニングポイントは挑戦からやってきます

子供の頃から音楽三昧で、大学でもピアノ科を専攻し、音楽家になると思って育ちました。ところが、1 日中練習で、今日も人と話をしていない、とハタと気づいたのです。そして、ホテルのフロントマンとしてアルバイトで入りました。これが最初の挑戦。人生のターニングポイントのきっかけになりました。とにかくホテルの仕事が面白かった。夢中になりました。その頃、日本はバブル景気でアメリカにもこぞって旅行に来る時代。日本でホテルのビジネスがしたい。念願叶って遂に帰国し、本格的なホテル業へ参入しました。音楽をやめてホテルでキャリアを積んでいこうと決意したのが2度目の挑戦です。ホテルの様々な業務を遂行するなか、数字に関する知識が足りない、日本語の奥行きが足りないということに気づかされます。そこでまた、私の挑戦が始まるのです。アメリカの公認会計士の資格を取る勉強にとり組み始めました。そして再び、ホテル業に専念し、業務が拡大していくと、次はマネジメントの知識が足りていないという壁に当たりました。日本語もきちんと習得したいと常々考えていたので、思い切って、イギリスの国立大学の日本校の大学院で MBA を取得するべく勉強の日々に入ったのです。私にとっては新たなる挑戦です。日本語で修士論文を提出した時は感無量でした。なぜ、ここまで私は挑戦をするのか。それは、自分の好きなことを仕事にしようと決意したからなのです。仕事をするにあたって足りないと思ったことは勉強する。取得して挑戦をする。それが、次々と人生のターニングポイントになっていたのだと思います。
そして、2025 年、新しい挑戦が始まります。カーネル・サンダース氏が世界中から愛されるケンタッキーフライドチキンをこの世に誕生させた彼の年齢までには、私にはあと8 年ある。そう信じて、後世に残せる仕事に取り組んでいこうと思います。

ロスアンゼルスのホスピタリティー業界でキャリアをスタート。
帰国後、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで
マーケティング業務に従事。米国公認会計士の試験に合格し監査法人に入所。
その後、スペースデザインで国内サービスアパートメントの
開発や運営などを経て、イシン・ホテルズ・グループに入社。
2007年に独立し(株)アゴーラ・ホスピタリティーズを創業。
2017年 3 月、SAVVY Collective を創業。ホテルやリモートオフィスの
開発およびマネジメントを手がける。
2020年 4 月に新規事業PerkUP株式会社を創業。
2025年 4 月に新規事業を始動。